スイッチ FASE3
                        s.s

 私の願いはそれだけだった。
 ただ、トシと一緒にいたいだけ。
 遥のことが好きだって聞いて、私は一人で泣いた。
 そんなときに、私はお守りをもらった。
「これは恋愛成就のお守りで、自分が持ってる分と、ライバルに渡す分があるんだと」
 どこの神社にでも売ってるようなお守りを二つ、私に渡した父は真面目な顔で言っていた。
 私を慰めてくれただけかもしれないけど、私はそれだけでうれしかった。
 でも、それをもらったことで人生が狂うなんて……全然思いもしてなかった。

 トシが私から離れていくのを感じていた高校の卒業式。
 私はトシに中途半端な打ち明け方をしてた。
 私を見る冷たい目を忘れられなかった……

 私たちは違う学校に行って、会うことがなくなった。
 私はたまに遥になって、トシの側にいられる。
 それだけでよかった。よかったはず、だった。
 同窓会の何日か前、トシは私に会いたいと言ってきた。
 その日、私はお守りを落としてしまった。
 まさか、トシが拾っていたなんて知らずに。

「もういいだろ……」
 同窓会の日のトシの言葉。
 気づかれていたのかもしれない。私の何年も思い続けた気持ちが、終わった瞬間。
 ただ好きだといえずに、お守りがくれた奇跡にすがり続けていた私はそこで終わった。
 今まで……ごめんなさい。
 騙すつもりじゃ、なかった。

 あれから二人には会っていない。
 変わったのは私だけ。離れていったのはトシじゃなくて、私のほうだった。
 バカだよね、私……

FASE3 END

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