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「・・・い、おい高原、しっかりしろ、たーかーはーらー!」
聞き覚えのある声で、僕は現実の世界に戻ってこれた。
「せ、んせい・・・?」
目を開けてすぐそばに、クラス担任の萩原先生の顔があった。
「学校に遊びに行ったまま帰ってこないという電話で心配して来て見れば、一体お前ら何をやってたんだ?」
呆れたような、半分怒っている先生の声の響き具合で、僕はそこが、一階の生徒玄関だと気づく。
帰ってこれたんだ。そう思って一度はほっとした僕は、慌てて先生の周りに、他の皆が正がいないかを確かめる。
「先生、正は?皆は?」
「ここにいるよ」
先生が答えるよりも早く、すぐそばで正の声がした。見ると、正も、他の皆も、そろって先生の後ろに立っていた。
これは後で聞いたことなんだけど、僕達の親から電話を受けた先生が学校に様子を見に行くと、生徒玄関で倒れたままの僕と正をかこんだ皆がいたそうだ。先生は、はしゃぎすぎて出口で頭を打って、脳震盪でも起こしていたんだろう、と言った。
「これで懲りただろ。もう二度と夜の学校に忍び込もうだなんて考えるんじゃないぞ」
いつもは悪戯をした奴全員にものすごく痛い拳骨をくれる萩原先生は、何故か僕達を注意するだけで家に帰してくれた。
校門を出るときに、僕は正を呼び止めて、さっきのことを覚えているか訊いてみた。
「お前、おかしくなってたんだぞ。覚えてるか?」
「うん。いとこの事を話そうとしたまでは覚えてる」
どうやら、正のいとこは本当に自殺した生徒だったらしい。それで、鏡の前で思い出した話を僕に聞かせて、ほんのちょっと怖がらせようとしていたそうだ。
「何であんなことになったのかは覚えてないけど、きっと、鏡の前に立った時に、俺達は昼間の学校とは違う空間に入っちゃったんだろうな」
「ふうん」
妙に説得力のある正の言葉に僕は少しだけさっきのあの恐怖体験の原因を思い出す。
「きっと、幽霊は寂しかったんだろうな。でも、悪いけど俺は、あっちに行くことはできない。俺はまだ生きていたい。生きて大人になって、この学校をいつか卒業するんだ」
そう言った正の顔は、いつもと同じ、落ち着きのある優しげな顔をしていた。
校門の外に出るとき、なんとなくだけど、見た事も無い顔をした正のいとこが、まだ僕達のことを見ているような、そんな気がした。
ねえ幽霊さん。僕はまだ子供だよ。けど、僕は、子供のままではいたくない。いつかこの学校も卒業して、大人になって、そして生きていきたいんだ。
だから、ばいばい。