北海 篤

 雨が、降っている。
 警報が出てもいいくらいに酷い、雨。
 そのなかで、傘もささずに自転車に乗っている僕。きっと周りから見れば異様な姿だろう。
 実際、すれちがった人達に少なからず注目されている。

 探し物が、見つからない。
 爪先までぐしょぐしょに濡れているのに、それが見つからないから帰れないんだ。
 みつからないから?
 …まあ、いいや。
 雨に濡れるのがキライな人もいるけど僕はそうじゃない。どちらかというと、好んでいる。
 雨音が他の音を消して、液体が他のモノに当たる音だけが響く。
 ざあざあと。
 たまに別の水の音が混ざるけれど、単調なその音は止まる事を知らぬかのように繰り返す。
 そこに、異質なモノが混ざる。
 ぷち。
 なにかが、破裂したような音。
 時計の秒針が一周半程してからやっと気付く。
 僕が何かを轢いたんだ。何か、小動物を。
 振り返って、後輪の方を見てみた。数歩後ろには、血に塗れた生き物だったモノがいる。雨の所為でぼやけた世界に紅い血痕だけが、その存在を主張しているようだ。
「…かえ…る……?」
 血の所為で元が何だったのか分からないけれど、経験上蛙だろうと予想はつく。
 だが、それは何か気になって僕は視線を外さない。外せない。
 その血は雨に流されない。拭われないで留まる、血。
 僕が命を奪った事を見せつけるように。
 探し物が、見つかった。


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