数ヵ月後。
 ある日突然壊滅した空中都市の支配から開放された、とある小さな国の酒場で、二人の青年が話しこんでいた。
 「だから、俺はその時見たんだよ。銀髪の男がさ、傷一つ負わずに敵兵を皆殺しにするのをさ!」
 「へーえ?」
 「嘘じゃない!確かにこの目で見てたんだ」
 「でも、後で記録を確かめてみても、そんな奴はいなかったんだろ?」
 「あ・・・ああそうさ、確かに何度調べても、そんな男が兵士として雇われていた形跡は無かった」
 「だろ?大体、銀髪の人間なんて、いるわけねえんだ」
 「でも俺は・・・!」
 「どうせ幻でも見たんだよ。お前も死にかけてたんだろ?」
 「うーん・・・」
 口篭もる青年の後ろで、店の主人に酒の代金を払い、一人の男が席を立つ。
 長い黒髪の痩せた男は、一度だけ、その藍色の瞳で、先程話していた青年を振り返ると、寂しそうに笑い、酒場を後にした。
 「あれ?」
 「どうした?」
 「いや、なんか今見覚えのある奴を見たような・・・」
 「気のせいだろ」
 「そうだな」
 それきり、男の姿を見たものはいなかった。
 


 終


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