先生の話
                        鬼神 利通

 僕がまだ小学生の頃、担任の先生がホームルームの時間にある話をした。
テーマは最近話題のいじめについてだ。
「今からいじめについてホームルームで話していこうと思うが、その前に簡単なカードゲームをしようか。」
 先生はいきなりこんなことを言い出した。僕や他の生徒達はその時、なぜ先生がこんなことをしようとするのかがまったくわからなかった。
「じゃあ川谷、戸坂、協力してくれるか?」
 そういうと二人は前に呼ばれてカードゲームをすることになった。
「ルールを説明するぞ。ここに1から10という数字が書かれたカードが一枚ずつ、全部で10枚ある。次に先生がこれを分けて二人に渡す。そして二人はもらったカードの中から数字を見ないで適当に選んだカードを一枚、裏向きにして机の上に出す。次に『いっせーのーで』のかけ声で同時に表を向けて、数字の大きいほうの勝ち、こんな感じだ。わかったか?」
 そしてゲームが開始された。ところがここで思いもよらない事が起きた。なんと、何回やっても川谷さんばかりが勝って、戸坂くんは負け続けたのだ。そうすると、
「先生、つまんないよ、このゲーム。全然勝てないよ。なんで?」
 と言って、戸坂くんは半泣きになってしまった。
さらに、
「私もつまらないです。だって絶対勝っちゃうもん。」
 と、川谷さんまでつまらないと言い出した。
 すると先生は少し困った顔をして
「すまんすまん、つまらなかったか」
 と言った。
 このようなやりとりをしているとまわりで見ていた他の生徒達は
「先生のカードの配り方が悪かったんだよ」
「そもそも、なんで『いじめについて』の話する時間にカードゲームなんかやってんだ?」
 そんなことを口にしだした。
 すると、先生は軽く口元をニヤつかせた。あたかも自分の企みがうまくいった、といったような感じを僕ははっきりと感じ取った。
 そして先生は川谷さん、戸坂くん、僕を含めた他の生徒に対してこう言った。
「実を言うとな、このゲームはインチキだ。必ず川谷が勝つように先生はカードを配ったんだ。なんなら全部のカードを表向けてみようか。」
 そういってカードを見ると、先生の言う通り川谷さんは6・7・8・9・10のカード、戸坂くんは1・2・3・4・5のカード、つまり、どうあがいても戸坂くんが負けるようになっていた。
 それを聞いたみんなは、なぜだと不思議がったり、おかしいと言って抗議などをしだしたりした。
 すると、先生は大声を上げて、
「静かに!」
と言って、みんなを一瞬でだまらせてしまった。


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