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夜。
傷が痛むけれど、あたしはまたひょこひょこと、歩いていた。昨日、ミコトちゃんと話した場所まで。
あたしが行くと、そこには大人の姿の、ミコトちゃんが、足をぶらぶらさせて座っていた。
待っていて、くれたんだ。
「ミコトちゃん」
あたしが言うと、ミコトちゃんはゆっくり微笑んだ。
ゆっくりミコトちゃんの傍まで近づいて、昨日のように肌を寄せ合って、座った。
「ねえ、コノハちゃん」ミコトちゃんは、ちょっと疲れていた声だったけれど、あの優しい声で、言った。
「なあに?」
「また、身体、触っていい?」
「もちろんだヨ」
あたしも微笑んで、答えた。
「ミコトちゃん」
身体を撫でてもらいながら、あたし、言った。
「今日で、いなくなっちゃうの?」
「……いなくはならないよ。ただ、見えなくなるだけ。
ずっとココにいるけど、誰にも見えなくなるの。
でも、寂しくないの。だって来年、またみんなに会えるから」
ミコトちゃんは、やっぱりちょっと寂しそうに言った。
あたし、その顔を見ながら、
「あたし、昨日、友達になってって言ったけど。
でも、あたし只のキツネで、ミコトちゃんは神様で。
だから、釣り合わないよネ。友達になんか、なれないよネ?」
あたし、ぽろっと言った。
ミコトちゃんは、首を一杯横に振った。
「そんなこと、ないよ。
そんなこと、言わないで……。
コノハちゃんは、私のお友達でしょ?
そんな寂しいこと、言わないで」
ミコトちゃんは、あたしの顔を見て、言った。
あたし、ぐぐっと頑張って、歯を食いしばっていた。
「……ほんとぅ……? ぐすっ。
ずっとずっと、友達で、いてくれる……?」
「うんっ! コノハちゃん。
これから、ずっとお友達でいてね!
何年も何十年も、きっときっと、ずっとずっと!
ずっとお友達だよ。ね! コノハちゃん!」
あたし、その優しいコトバに、我慢できなくなって、
「ぅぅ……うわぁーんっ! ミコトちゃーん!」
我慢できなくなって、その優しさに嬉しくって、いっぱい泣いた。ミコトちゃんの身体に飛びついて、いっぱい身体をすりよせて、泣いたの。
ミコトちゃんは、優しく、頭を撫でてくれた。
それだけで、とっても嬉しかった。
「ずっと、ずっと、友達だからネ…………」
*
今年もまた、ふもとのお社が、ニンゲン達の作った光で包まれだした。その度ごとに、あたしはあの夜を思い出す。
「……とうさん、かあさん、コノハねーちゃーん!」
不意にガサガサと大きな音を立てて、去年家族の一員になった弟のアリアが叫びながら、帰ってきた。
がんっ!
「ぶべっ!」
勢い余って、木の枝に顔面を打ちつけた。
「きゅう」
「まあまあ、大丈夫? アリアくん」
「そうよ、だいじょうぶなの?」
おかあさんとあたしが駆け寄ると、アリアはがばっ! と身体を起こして、
「大変だよ! 神社で、ニンゲンがいっぱいいたんだ!
綺麗な赤とか青とか、色んな光で飾って、ボク、初めて見たよ! 凄いなあ」
アリアの興奮したそのコトバを聞いて、あたしとおかあさんは顔を見合わせて、笑った。
はてな顔でこっちを見ているアリアに向かって、
「アリア。お姉ちゃんのお友達に会いに行こうか」
「え?」
きょとんとするアリアに、笑いを堪えながら、あたしは言った。
「神様の、お友達に。会いに行こう」
(おしまい)
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