「待ちなさああああいっっ!!」
「待てやこらああああああっっ!!」
「大人しく、仕留められろと言うにぃぃっ!!」
俺は走っていた。追いかけるのは天使の長と、悪魔が二人。どっちに捕まっても確実にあの世の獄門島送りだ。絶対に、そんなオチは避けねばならん!・・・だが、もう限界が近い。走っているうちにだんだんと意識が遠のいていく。
「・・・なんで、こんな事になったんだ?」
そうだよ!何でこんな事になったんだ・・・。悪魔と掛け合い漫才やって・・・。空想特撮シリーズをライブで見て・・・。天使に脅迫されて・・・。そうだ、これはきっと夢に違いない!こんな事、現実に起こる筈がない。そうだ、願い事を言おう。それがきっかけで、夢から覚めるかもしれない。
「ようし、わかったああ!願い事を、言うぞおお!」
これを言えば、きっと夢は覚める。俺は振り向いて、眼前に迫る超越者たちに向かって叫んだ。
「全て、夢であってくれえええええええっ!」
・・・・・・・・・。
はっ。
 俺は急速に眠りから覚めた。部屋もいつも通りの俺の部屋。時刻は午後十時を少し回ったところ。冷え冷えとした、みぞれ交じりの雨が窓の外を駆け抜けて行く。少しの間、うたたねをしてしまっていたらしい。
「なんだ、やっぱり夢だったじゃないか」
俺は身を横たえていたベッドから立ち上がると、机の上のたばこを手にした。まだ、一本残っている。
「でもあんな刺激的な夢なら、ちょくちょく見てもいいかな〜」
そうつぶやきながら、俺はたばこに火をつけた。
「天使さんなんか、性格はアレだけど結構綺麗だったしな」
紫煙が立ちのぼる。
「悪魔二人も、いい味出してたし」
俺は一服を肺の奥まで吸い、ゆっくりと吐き出す。しかし、その量は常時を遥かに上回るものだった。
「三マッチョは・・・、いらねえか」
その煙はどんどん体積を増し、徐々に渦を巻き始めた。
「って・・・、あれ」
その渦が暗黒を帯び、雷鳴が閃くようになった時・・・。俺の手から、たばこがぽとりと落ちましたとさ。

・・・どっとはらい。




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