――ポメラニアンのレナと全ての人に捧ぐ
うちでは何故かドラゴンを飼っている。親が間違えて買ってきたからだ。ほんとにどう間違ったんだか。彼らは動物が大好きで特に犬が好きなようだ。むかしから犬を飼うのだとはりきっていたっけ。
そんなある日、僕が家に帰ってきたら見知らぬ生き物がそこにいた。足にまとわりついてきたり、そこらへんのにおいをくんくんかいだり。動作はまるで犬だ。しかし色が違う。形が違う。僕はその様子を笑顔で見ている両親に訊いてみる。
「これ、なに」
「見てのとおりよ」
なんとずれた母さんなんだ…
「見てのとおりって、なんだか見たことない生き物なんですけど?」
「ばかだな、おまえは。どう見たって犬じゃないか。よしよしおいでーぽち」
「は?」
父さん?僕にはあなた方のほうが理解できないんですけど?しかもぽちって!(ほとんどの場合)犬の名前だし音声だとわかりにくいけどひらがな表記だし!こんな親には何を訊いてもむだだ。
僕は階段をかけのぼり、自分の部屋においてある、誕生日に買ってもらった百科事典をめくりにめくった。かたっぱしから調べてみる。やっぱりそんな犬なんていないじゃないか。
しかし、ページを繰っていた僕の手はある記事のところでとまった。そこに書かれていたのは空想上の生き物だった。
「うそだろ…」
思わずことばがこぼれてしまう。だってこんなことありえないんだ。うちにドラゴンのこどもがいるなんて。一応違う生き物かもしれないって思って最後まで調べてみたんだ。
でも。それ以上の成果はなにもなかった。
僕は見つけた記事のあった巻だけをひっつかんで階段をかけおりた。慌てて降りたんでもうちょっとで落ちそうになっちゃってたけど。危なかった。
そう。それよりも!ドラゴンだよドラゴン!中日でもないし麻雀でもないしゲームやファンタジーの世界でもないんだってば!もし僕が勇者だったら倒さなきゃいけない敵ナンバー1って感じでしょ?てゆーか存在してるはずないじゃん。そっかー夢か夢だよなぁ。ひとり納得しながら、僕はさっきもいたリビングへ足を踏み入れた。
…って、やっぱおるー!!
驚きのあまり、関西弁。そんなこと、どうでもいい。
しかし、長い夢だよなぁ、どこからが夢だったんだろう?朝起きたとこからかな?てことはもう一度寝たらこの夢から覚めるはずだよな。なんてことを一瞬で考えた僕は両親にこう言って部屋を出た。
「今日はもう寝る…。おやすみ…」
両親は不思議そうに顔を見合わせながらも、僕のことを気遣うように声をかけてくれる。
「調子悪いんだったら薬のんどいた方がいいよ?おやすみなさい」
「いや、大丈夫だから」
僕はそう答えながら、部屋へむかう。何故か足取りが重い。一気に疲れたような気がする。
頼むから夢であってくれ!そう思いながら、ベッドに倒れ込む。風呂はあしたの朝シャワー浴びればいいや。