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さわやかな朝。カーテンの隙間から差し込むやわらかな光。まさに朝って感じ。他の人がどう思うかは知らないけど。目覚めた僕はなにか違和感を感じていた。いつもの朝とどこかが違うのだ。それがなんなのかはわから…っと!うわ!
いる!またあいつがいるんだ!
そう、視界の隅の方に入ってきていたのは僕のベッドの端にいてちょこちょこ動き回っていたのは昨日の奴だった。
ゆ、夢オチでもないのかーッ!これはどうやら現実として受け入れなければならないらしい。ぎゃ、手をなめられた。少しだけざらついた感触。なめられた部分が少しべとつく。見た目なんか気にしなかったら犬みたいな行動だよなぁ。僕も犬は結構好きなんだけどな。
起きてから数分。僕はそのありえない状況を受け入れかかっていた。そいつを抱きかかえて階段を下りる。僕は何故かそいつに話し掛けていた。
「なぁ、お前。どうやってのぼってきたんだ?」
「ぴぎゃぴぎゃ」
僕のことばがわかるかのように、緑色のそいつは答える。しかも、興奮しているらしくえらく暴れるのだ。
「あ、暴れるなって。落ちちまうぞ?」
間に合わなかった。そいつは僕の腕からすり抜けるように…落ちていった。危ないときって周りの風景がスローになるってほんとなのだ。僕は腕を伸ばしたけど届かない。もうだめかもしれない。
地面に衝突するかと思った瞬間。
緑色は翼を広げた。小さなそれを羽ばたかせて飛ぶ。
…なんだよ、飛べるのかよ。だってドラゴンだもんな。心配して損した。…心配?心配ってなんだよぉーッ!もういい、疲れた。やっぱ、認めない。こんな非常識なことあっていいはずがないのだ。
父さんはテーブルについて既に朝食をとっていた。母さんはキッチンでお弁当を作っていた。僕が下りてきたことに気付いた母さんは声をかけてきた。
「おはよう、ぽちに起こしてもらえた?」
…犯人は母さんだったのか。
「もしかして母さんが僕の部屋に連れてきたの?」
「そうよ〜。かわいいめざましでしょ?」
のん気ににこにこしながら母さんは答えた。
僕はもう何も答える気力もなかった。
「シャワー浴びてくる…。朝ご飯はもういいや」
「シャワーはいいけど、朝はしっかり食べなきゃだめ!」
こういうとこだけ、厳しいのだから。やっぱり僕はこの親が理解できない。
朝ご飯はトーストと砂糖とミルクたっぷりの紅茶。席についてすぐ、用意されたトーストをかじりながら紅茶で流し込む。もっとゆっくりかんで食べなさいとか言われたけど。一刻も早くこの場を離れたいのだ。
すぐに食べ終えると、シャワーをさっと浴びる。学校に行く用意はほとんど終わっているから着替えて出かけるだけだ。あの動揺していた中でここまでやるなんて我ながらすごいなと思ってみる。まぁ、たぶん普通なのだろうけどもさ。
ランドセルを背負って「いってきます」一応元気にあいさつして出かける。あいつがついてこようとしたけど、急いでドアを閉めた。なにかすごい音がしたような気がするけど気のせいだ。気にしないで歩き出す。あとは父さんか母さんがなんとかしてくれるさ。
あいつには「ぽち」って名前があるらしいけど、名前で呼ぶ気にはどうしてもなれない。存在すら認めたくないのかもしれない。そんなことを考えながら学校までの道のりを歩いていた。