あれから一週間ぐらい経っただろうか。あれこれ考えてから、私はパスポートを発行したり、引越しの手続き等の地味な作業を一つずつ片付けながらベルギーでの楽しい一時を想像していた。
 ベルギー出発の準備が整い、もう明日を待つばかり、遠足気分のハイテンションだったが、騒ぎ疲れて(※独りです)いつしか寝てしまった。


 寝過ぎた。もう10時を回っていた。しかし、今日は記念すべき日・新たなる門出の日である。それに飛行機の時間までまだ余裕がある。多少のことを気にしていてはいけないぞ、私。
 顔を洗って歯を磨き、髪をセットし、少し早い(朝食兼)昼食を食べ、スーツケースを持っていざ出発、っと思ったその時、誰かが家の呼び鈴を鳴らした。警察だった。私が真犯人であるということがバレたのだ!

 警察家来て差し出す令状
 私は慌てて駆け込む便所
 密かに忍ばせギラつく包丁
 知らない間にマスコミ報道
 抜け穴通って隣を強盗
 人質とったら車を要望
 警察怒って真っ赤な形相
 私はニヤリと余裕の表情
 車でまんまと遠くへ逃亡
 空港着いたら飛行機に搭乗
 移動の途中の景色は農場
 その次見たのは小さな工場
 高速出る前警察登場
 参りましたと私は投了?
 そういうわけにはいかない。私は逃げなければならないのだ。私は私の人生設計を忠実に遂行しなければならないのだ。


 警察とのカーチェイスが始まった。警察が現れたおかげで高速道路から出られなかった(一般道をトロトロ走っていたのでは捕まってしまうと考えたので)私は、高速を光速で走った。警察も必死に追いかけてくる。ゲームセンターでしかやったことのないアクセルワークとハンドルさばきで何台、何十台、あるいは何百台という車を私は軽やかに抜かして行った。これなら行ける!私は思っていた。
 ところが、浮かれていた私は重大なことを見落としていた。ガソリンが残り少ない!逃亡用なら速い方が良いと思ったのでスポーツカーを用意させたが、思ったより燃費が悪く、ここまでは計算に入れていなかった。このまま何時間も走っていられる量は残っていない。ガソリンスタンドに行っていつものようにレギュラー満タンと言うわけにはいかない。車を止めた時点で私は捕まると思うからだ。
 大分走って、やはりこのまま走っていても燃料切れになると思った私は考えを改め、高速を降りることにした。燃料が切れた後、まだ逃げ道も何も無い高速よりは、下の道を走った方が逃げ道があるような気がしたのだ。私はここでも直感に賭けた。


 

 ついに燃料が切れ、車を降りざるを得なくなった。車は海岸沿いの道で停車した。これからどうするかはもう答えは一つしかない。陸がダメなら海しかないでしょう。
 警察もしつこく追って来ている。この辺りは海岸沿いではあるが、船の停車場は見当たらない。こうなれば泳ぐしかない。
 私は泳いだ。警察はというと、まず服を脱ぎ、次に準備体操をしてから何人もの警察官が海に飛び込んでいった。さすが公務員。


 

 結局捕まってしまった(当たり前か)。見事に私の直感ははずれてしまった。いや、運が続かなかっただけなのかもしれない。
 そうそう世の中甘くはなかった。甘いのはチョコレートと政治改革だけだ。
 私は心の中でそう思いながら、パトカーの中で涙した。


終わり


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