カインの法則
                        山路 すもも


 トンネルを抜けると、其処は雪国だった。
 バーイ、川端康成。
 とまあ、これは低血圧ついでに寝起きのジョークで一発かましてもオッケーな場合。
 そりゃ雪の降る寒いところで列車に乗ってりゃね、トンネル抜けりゃそこは雪国だっつーの。
 問題は、俺、こと永井和也の場合。
 学校の窓から落ちると、其処は密林だった。
 バーイ、俺。
 ・・・・・・って、
「ど――なってんだこりゃ――――――――――――――――っ!」
 叫ぶのも当然なんだよ。
 だってさ、俺が通ってる大学ってのは街中にあるわけで、窓の外と言えば大概コンクリートかアスファルト、そんでもって、石段とか、ローラーで綺麗にならした砂の地面とかいう自他の光景が広がってるのが当然だ。
 そして、俺はそんな大学の五階の窓から、ついうっかり、実を言うとなにがきっかけだったのかすらわからない状況で、落ちてしまいましたとさ。
 いえいえ、昔話みたいにまとめてる場合じゃなくてね。
 つまり要約すると、俺は窓から自分の体が半分以上はみでて、重力にしたがって落下し始めたその瞬間、思わず死を覚悟しちゃったわけなんですよ。
 嗚呼せめて、死ぬ前に一度は骨付きカルビの焼肉っていうのを食べてみたかったなあとか思いつつ、本気で走馬灯を拝んだりもした。
 でも、いざ地面に落下してみると、これが意外と柔らかい。
 あの世っていうのは、死ぬ瞬間にまでサービスしてくれるんだな、とか思いつつ目を開けると、其処は観音様がいるわけでもなく、天使がラッパ吹いてるわけでもなく、かと言って閻魔大王が待ち構えてたわけでもなかった。
 そう、さっき言った通り、俺が今いるのは、どう見ても森の中。
 目を開けてから五分くらい経過したと思うけど、ここが天国とか言う実感以前に、俺って本当に死んだのかな?っていう疑問しか浮かんでこない。
 もしかして、俺、まだ生きてるのかな。
 この際お笑い芸人でもワイドショーの司会者でも、何でもいいから俺に突っ込んでみてくれ!
 痛くないならここはあの世だ!
 でももし痛かったらどうしよう。
 どう見てもここは大学の窓の下じゃない。
 て言うかそれ以前に建物が見えないから、大学の敷地内ですらないんだよね。
 ホント、何度も言うけど、ここって何処だろ?
 考えているときりが無い。でも、考える以外にすることも見つからないので、俺は暫くの間そこに座り込んでいた。
 森の中でなんか猛獣が出たりするかもしれないとか、そんな事は全く頭に無かったけど。
 まあ、結果として猛獣は出てこなかったんだけどね。



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