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「あはははは」
麗は人知れず、笑った。
笑いも出てこよう、彼女は釈放されたのだから。
刑務所から出た彼女は忙しい日々だった。新聞や雑誌、週刊誌の取材。警察に対するバッシングは相当ひどいものであった。「本を出してみないか?」との誘いもあったほどだ。さすがにその誘いは断ったが、彼女は全てを書き留めておいた。
自分のしたことを忘れないように。
一葵のしたことを忘れないように。
夫を、一葵を殺したのが啓志だという事は一葵の死体を見たときから分かっていた。いや、事前に知っていた。
啓志に『家族を殺したのは龍耶ではなく一葵だ』という告発文と証拠を送りつけたのは他ならぬ彼女だったから。
いつか、啓志が一葵を殺してくれることをずっと待ちつづけた。そして、この日がきたのだ。
彼女は幸せだった日々を思い起こした。
それは遠い記憶。
彼女は夫である(正確にはあった) 一葵と結婚する前に、同棲していた恋人が、いた。それが龍耶だった。具体的なことは何ひとつ決まっていなかったが、結婚も考えていた。彼には前科もあったし(つまらない罪ではあったが)、仕事も長続きしないどうしようもない人だった。けれど、彼女と生活を共にすることで、少しずつ変わっていっていた。少なくとも、彼女にはそう思えた。
信じていたのに。
ある日彼は警官に連行された。
『友人(啓志)の妻を寝取り、それがこじれて惨殺に至った残虐な犯人』として。
そうではないことを、誰よりも彼女が知っていた。もちろんそう訴えたが、黙殺された。
彼女がその裏に権力が関わっているのを知るのは後のことになるが。
警察はろくに捜査もせずに龍耶を犯人だと決め付けた。そしてお決まりの脅迫じみた尋問。精神的に打たれ弱かった彼はそれに屈して、やってもいない罪を認めてしまった。
・・・そして、彼は・・・
…彼女は空に向って微笑んだ。
彼を死に追いやった夫、そして罪をなすりつけた警察に対する復讐は終わったのだ、と。