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カーテンの隙間から漏れる朝日であたしは目を覚ました。
目覚ましがなる前に眼が覚めることなんて、小学校のときくらいだったと思う。
「ん……あぁ」
慣れない吐息と視線に飛び込んできた鮮やかな黒い髪。
はっとして上体を起こすと、そこはあたしのいる場所じゃなかった。
「あれっ……?」
独り言なんて呟いたつもりはない。
いつもより細く見える腕のラインと長い指。正直、ピアニストにでもなれる気がした。
着ているパジャマもいつものじゃない。ブルーのストライプがお気に入りのあたしがピンク色……
状況を理解するにはまだ時間がいる気がする。
きょろきょろと周りを見回すと、何の飾りもない目覚まし時計が視界の中に入ってきた。六時十五分を差すアナログ時計の目覚し機能は七時にセットしてあった。
脇に吊ってある制服は間違いなくあたしの学校のセーラーで、置いてある鞄も学校指定のもの。
でも、違った。
ここは智美の部屋で、あたしの居場所じゃない。
えっ、ウソ……
偶然見た鏡の向こうに智美がいた。
気がつくと自然に智美を演じるようになっていた。
「おはよー、智美ぃ」
彼女に会うまでは。
座っているあたしの前に立つのは、少しブラウンがかったセミロングの女子高生。思っていたよりもすっきりした鼻のラインが妙によく思えた。
あまり頭はいい方じゃないけど、明るい子。そこにいたのは本城遥。あたしであるべき女子高生。
「智美、どしたの?」
言葉を発することを忘れていた『あたし』への言葉は、確かに、『あたし』の口から発せられているのは間違いない。
その不思議そうな表情さえも、『あたし』が知らない『あたし』なんだろう。
「ど、どうなってんの……」
「へっ?」
智美である自分の言葉に、遥であるあたしは聞き返してくる。
もう、あたしは岸原智美であることを装えなくなっていた。
「なんでこうなってんのよっ」
机を叩いて立ち上がったあたしの肩に、遥は手を乗せる。
「あたしだってわかんないんだから、今は落ち着いてよ、ハルカ?」
智美を見てハルカと声をかける遥。あたしは何かを知っている……
同じくらいの身長の智美と遥。目が合った今のあたしは智美だけど、遥であるあたしの目は真剣だと思った。
自分を褒めるみたいで恥ずかしいけど。