スイッチ FASE2
                        s.s

 人にはよく誤解されてる。
 周りはオレをちやほやしていたが、本当のオレはもっと根の暗いヤツだった。
 テニス部でガンガン飛ばしてた時期があるのは確かだ。それもだいぶムリをしてた。正直、オレには智美のように地味に生きる方が性に合ってたんだろう。
 臆病で、ただいい人ぶってるうちにああなってたんだ。
 自分で言うのもなんだが、オレはかなり情けないヤツだった。
 そんなオレが経験した不思議な話をしよう。

「とぼけんなよ」
 高校時代、幼なじみの智美の様子がおかしいことがあった。
 オレは明らかに不機嫌だった。
 かなり怒ってたのは事実だ。
「本城のことが好きだって話だよ……お前だから話したんだろが、忘れんなよ」
 本城遥、同じ部の友達だったが、気に入ってた子の名前だ。
 そしたら、智美のヤツが黙り込んでしまった。
「あっ、ご、ごめん、忘れてたんじゃなくて、いろいろあってさっ」
 前に話したことでどうして慌ててるのか、理解できない。
「いいけどよ……」
 全く良くないのに、オレはそう答えていた。
 空を見ることしかできなかった。
「今日は食って掛かってこねぇんだな。もうわけわかんねぇよ、オレが悪いって言いたいんだろが」
 自分でも思う。
 冷たいヤツだと。
「細かいこと言ってもアレか。わりぃ」
 すぐに撤回する努力をするのが情けない。
 自分でもわかってることだった。
「いいよ、試合に出られないから気が立ってるんじゃない?」
「マジわりぃ、とっとと帰って頭冷やすわ」
 智美の不自然な笑いに答えてやるしかない。
「じゃあ、明日な」
「うん、ばいばい」
 不自然な智美に見送られて、オレはその場を後にした。

 それからだ、智美と遥が不自然になったのは。
 オレ自身、たまにどっちが智美でどっちが遥か、ふと迷うことがあった。
 それがどういうことか、オレが知るのは高校を卒業する時だった。
「ねぇ、トシ」
 智美だ。
 オレが一人で教室を出ようとしていたときに、声をかけてきた。
「ん?」
「信じるかどうかは分からないけど、最後に言っておきたいことがあって」
「何だよ?」
 そのときに聞いたのが信じられない言葉だった。
 人間の意識が入れ替わるなんてこと、オレには信じられない。どっかのドラマかなんかでたまに見るが、実際に起こりうることじゃない。
 ただ、智美がそんなことで冗談を言うような性格じゃないのは良く知っていた。
「本気で言ってんのか?」
 オレは思わずそう聞き返していた。
 窓の外に遥の姿が見える。
 黙っている智美を見ていると、どうやら嘘じゃないらしいことが分かった。
 ただ、それだけだった。
「遥には……ううん、私ともその話はしないでね」
「わーったよ、黙ってりゃいいんだろ」
 それから、見極めようとする生活が始まった。


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