4
5 出会い・決意
「山に遊びにいってきまーす。」
元気に遊びにいく桃太郎、外見は十七、八といったところだろうか。いつも通りに山に入り刀を振り回してると声が聞こえてきた。木の陰から覗いてみる。
「鬼に逆らうとはいい度胸だ。今ここで食ってやる。」
一人の大男が一人の村人に襲いかかろうとしている。桃太郎は、刀を握り直したが、遅かった。
「ギャアー!!」
思わず目を背ける、鬼の金棒が村人の頭を潰していた。飛び散る血しぶきと異様な匂いが漂う。
その時だった、桃太郎の脳内に異変が起きたのは。今までに感じたのことのない恐怖、それでいて何故か懐かしさが込み上げてきたのだった。記憶が混乱してくる。見たことのない景色。聞き覚えのある声。
『おまえは……殺すために、生まれてきた。』
大事な気がする部分が出てこない。頭を抱えながらいつの間にか鬼の前へと出てしまっていた。
「なんだ、人間がまだ居たか。おまえも食ってやろう」
村人を食べていたのか、血だらけの鬼が桃太郎を見下していた。
『おまえは希望だ……悪い奴等を……殺せ。全て殺してしまえ…。悪い者?……村人を殺した、鬼。目の前にいる、鬼。鬼。』
気付いたときには桃太郎は鬼を切り刻んでいた。
「おばあさん、おじいさん。私は、桃太郎は、鬼退治に参ります。」
ガシャン、と盆を落とすおばあさん。草履を作るおじいさんの手が止まる。
「桃太郎、何を言うんじゃ。鬼退治なんてとんでもないことじゃ、鬼に逆らってはいかん。この前も鬼に逆らった家の靴下が、左右別々にされたんじゃぞ。おそろしいことじゃ。」
おじいさんが言うとおばあさんも言う。
「そうですよ、桃太郎。あんたに何ができるのです。」
「いえ、私には鬼を倒す力があるのです。鬼を倒すために生まれてきたのです。行かせてください、この世を守るために、人間のために。」
桃太郎の言葉にうなだれる両者。急に家の戸が開いて近所の村人がやってきた。熊さんと吉さんだった。
「じいさん、桃の言うとおりいかせてやれ。鬼を成敗してくれるのは桃しかいねぇよ。それに、運命はかえられねぇよ。」
熊さんの言葉にさらにうなだれる両者。おじいさんは立ち上がると、押入れの中から刀を取り出してきた。
「この刀は、前にわしらが一揆を起こしたときに失敬してきた刀じゃ。なんでも大層に飾ってあったから、良く斬れるのかもしれん。これを持っていけ。」
「明日の朝、おいしい『きびだんご』を作ってあげましょう。」
おばあさんが涙ぐみながら言う。
「ありがとうございます。」
頭を下げる桃太郎、なにげに帰っていく熊さんと吉さん達。
「そうと決まれば、今日は早く寝よう。」
おじいさんが言った。三人で過ごす最後の夜であった。
次の日、桃太郎は腰にきびだんごと刀を携え、新しい服を身にまとい村人に送られて鬼退治へと向かった。
おじいさんは、一枚の紙を見ていた。桃太郎が入っていた桃に一緒に付いていた紙であった。
『悪を倒す、希望よ。』
そう書かれていた。