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8 決戦、鬼が島
「おじいさん、おばあさん。桃太郎は世のため人のため、鬼を退治しております。」
祈りを捧げて『鬼が島』に足をのせる。ここが鬼の本拠地である。
「さぁおいで、愚かな鬼供。残らず殺す。」
力強く大地を蹴り、駆け出していった。
「父さん大変、殺人者が島へ上陸したわ。」
娘が部屋に飛び込んできた。恐怖心がにじみ出ている。…無理もない。人間に殺されてしまうかもしれないと思い込んでいるからな、鬼供は。
「心配するな、鬼に勝てる人間などいない。そのうち、軍にでも殺されるさ。」
「もう、のんきなんだから。こんなときあの兵器があったら、人間なんて簡単に倒しちゃうのに。」
悔しがる泉は部屋を出ていった。またニュースに釘付けになりにいくのだろう。私は、机の引出しに入ったある物を取り出した。
切り札、彼はそう呼んでいた。
「責任は、自分で取るものだよな。」
自嘲ぎみに笑った顔がどこか悲しげだった。
「緊急警報、緊急警報。鬼が島西区の住民はすみやかに指定の場所へ避難してください。繰り返します、鬼が島西区の……」
桃太郎は血塗れの刀を振りかざしていた。
…力が湧いてくる。なんという力だ。この島へ来たときからさらに強くなってきている。ここの空気が自分に合っているのだろうか?
どちらにせよ……
「鬼は私が滅ぼす。私を含めた人間のために。」
そしてまた、逃げまどう鬼を斬るのだった。
「泉、泉は居ないか?」
鬼島は娘を呼び寄せた。彼は、娘に他の鬼と共に逃げるように説得した。
「父さんはどうするの、このまま残って。」
「私はあの殺人者を懲らしめに行く。」
「なにいってんの!相手は何十人も殺している殺人者なのよ。軍も手も足も出ないのに、何ができるのよ!殺されちゃうわ!」
「相手の弱点は分かっている。倒せないまでも、弱らせることはできる。そうすれば、後は軍にでも倒せる。」
「弱点?見たこともない人間なのに?一体どういうことなの?」
泉は知らず知らず叫んでいた。鬼島は娘を見つめてため息をついた。
「まだ分からないのか。あの人間は、いや、あれは我々の仲間だ。消えた桃が成長した姿だ。」
思わず息を飲む泉。信じがたい事実だが、彼女もそんな感じはしていたのだろうか。
「…でも、でも何で?人間じゃなく鬼を?」
「おそらく、あの時消えた桃は海にでも落ちて人間の住む世界へと行ってしまったのだろう。桃から生まれて最初に見たものを親と思うようにプログラムしたのが間違いだったのだろうか。人間に育てられたのだ、鬼を殺すように命令されたのだろう。」
「じゃ、本人は自分が鬼だと分かってないのかしら?」
「あぁ、思ってもいないだろうな。そう気付けば、過ちを止めるかもしれない。」
泉は、少し黙りこんだ。そして、
「父さん、私も戦う。」
「やめてくれ〜、殺さないでくれ〜」
鬼の悲鳴が響くが誰も聞こうとしない。そんな暇など誰にもなかった。桃太郎は一つ、また一つと村単位で鬼退治を行っていた。これで8つ目の村を滅ぼし、退治した鬼は三桁を越えていた。
「さすがに疲れたか。少し休憩するか。」
桃太郎は腰に付けた『きびだんご』を食べた。懐かしい味だ。
「おばあさん、おじいさん、桃太郎は頑張っています。見守っていてください。」
そう空につぶやくと、苦しめられている村の人々のことを思い出す。
「許さない、残虐非道の鬼達め。人々に代わって成敗してくれる。」
新たに決意するのだった。