晴れた空の下を、兵士たちを乗せた馬車は進んでいく。
  「何処まで連れて行かれるんだろうな」
  不意に、隣に腰掛けていた男が、ランスロットにそう話し掛けた。
  静かな、けれど良く通る低い声。
  その時になって、彼はようやく、自分の隣に座っている男の、風変わりな容貌に気付いたのだ。
  長い、真っ直ぐな銀髪を、結びもせずに背中に流した、色の白い男だった。
  浅葱色のシャツを着た細身の男は、見たところランスロットよりもだいぶ年上のようだった。
  痩せた顔に、一際目立つ鼻筋の傷。
  切れ長の鋭い瞳は、夕闇に似た藍色をしている。
  軽装で、簡素な革の鎧しか身につけていないその男は、どう見てもこの国の人間ではない。
  「俺に聞いても知らないよ。俺達は、ただ黙って馬車に乗ってれば良いんだ」
  一目見て、男がどこか遠い国の人間であることに気付いたランスロットだが、それは口にせずに、先程の男の質問に答えるだけにした。
  多分、彼の住んでいた国も、侵略を受けたに違いない。
  どうせ似たような事情なのだから、聞いても仕方無い。
  そう思って、ランスロットはあえて男の事を尋ねなかった。の、だが。
  「お前、なんて名前だ?」
  「え?」
  男が、更に話し掛けてきた。
  顔を上げると、無表情としか言い様のない、良く言えば涼しげな、悪く言えば無愛想な男の顔がこちらを向いている。
  なんだこいつは。
  もしかしたら、その愛想のない顔に似合わず人見知りしない性格なのだろうか?
  などと考えているうちに、男は更に尋ねてくる。
  「まさか名前がないわけはないだろう?なんて名前なんだ?」
  妙にしつこいな。
  ランスロットは男の言動を怪しんだが、仕方なく答えてやることにした。
  「ランスロット」
  「下の名前は?」
  「・・・・・・ハーティリー」
  答えると、男は静かに頷いて、微かに笑う。
  「そうか、俺はガルム。ガルム・ヴァナディスだ。以後よろしくな、ランスロット」
  変な奴。
  ランスロットはそう思い、黙って頷く。
  二人を含め、多くの兵士を乗せた馬車は、まだ目的地へと走りつづけていた。


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