私は、夢を見ている。
 子供の頃、良く遊びに行った祖母の家にいる夢。
 薄暗い畳部屋の向こう側、縁側に、子供の頃の私と、祖母が並んで座っている。
―ねえばあちゃん、どうして影和邇は、人を食べちゃうの?―
 子供の私が、祖母に問い掛けた。
―魚の方が、美味しいんじゃないの?―
 いかにも子供らしい、最もな問いに、祖母は、少しだけ口元を綻ばせ、ゆっくりと答えを返す。
―影和邇は、御霊を喰らう妖なんだよ―
―あやかしって、なに?―
―人でも、獣でも、物の怪でもないものさ―
―あやかしは、みたまを食べるの?―
―ああそうさ、だからお前も気をお付け―
 最後に祖母は、首を傾げる子供の私ではなく、その光景を見ている私の方を見て、不思議な事を告げた。
―影和邇は強い御霊をより好む。良いかい、影和邇を捕らえたら、必ず追い出すんだよ―
「・・・追い出すって、何処から追い出すんだい、ばあちゃん?」
―八雲の八重垣―
「え?」
 急に、縁側の向こう、外から、強い光が溢れ出してくる。
 私はそれ以上、祖母の姿を見ることが出来ず、また、祖母の言葉の意味を聞き返すことも出来なかった。


← Back    Next →