あたしがふと気が付いたときには、もう夜は明け始めている頃だった。だから、あたしはミコトちゃんとサヨナラしなきゃいけなくなったんだ。
「ミコトちゃん……ゴメン。
 あたし、おとうさんとおかあさんの所に、帰らなきゃ。
 いっぱいおこられちゃうの」
 ミコトちゃんも、小さく頷いた。
 でも。あれれ?
 ミコトちゃんは、でも、どうしてずっとこんな所にいたんだろう? ミコトちゃんの、おとうさんとおかあさんは、どこで何をやっているんだろう?
 別れる前に、あたし、ちょっと気になった。だからミコトちゃんに聞いてみることにした。
「ねー、ミコトちゃん」
「んー……?」
「あの。
 ミコトちゃん、昨日の夜からずっと、ミコトちゃんここにいたんだよネ? だけど、ミコトちゃんのおとうさんとおかあさんは心配していないの? 早く帰らないと、一杯おこられちゃう……」
 あたしは、心の中にあった気持ちを、そのまま素直に伝えた。ミコトちゃんは、それを静かに聞いていたけれど、少し寂しそうに微笑んで、
「私、家族とかいないの……」
「え!」
 あたしは、ミコトちゃんのさりげないコトバにびっくりして、思わず少し飛び上がった。
 あたし、聞いちゃいけないコト、聞いちゃった……。
「……ゴメン、ミコトちゃん……」
「ううん。違うの、コノハちゃん。そうじゃないのね。
 あたし、普通の人間じゃないから、お父さんやお母さんがいないって事、別に寂しくなんか無い。
 それにね。私、ずうっと一人でやってきたの。
 だから、だいじょう……」
 ミコトちゃんのコトバの、最後の方はあたしには届かなかった。あたしの頭には、入ってこなかった。
 ミコトちゃんは、ずっとひとりだったんだ。あたしがずっと寂しかったから、何かわかる。寂しい時にほど、寂しいってコトが分かんなくなる。素直に自分のココロが出せなくなって、おかしくなる……。
「……だめっ!」
 あたしの突然のコトバに、ミコトちゃんは身体をびくっ、とさせる。
「コノハちゃん……?」
「ちがうの……。
 あたしも寂しかったの。おとうさんもおかあさんもいたケド、だけど、今日みたいに、自分の本当のキモチをいっぱい言えるような相手が、トモダチが、絶対必要なの!
 だから、さびしくないなんて、強がっちゃダメなの!」
「え……っ」
 あたし、一息にコトバを出したから、ミコトちゃん凄く驚いていたけれど、ミコトちゃんの顔は少しずつ微笑みに変わっていった。
「そうだね。コノハちゃんの言うとおりだね。
 私ずっとひとりだったから、というかね、
 私、凄く久しぶりに、こんなに一杯喋ったのね。
 ずっと誰とも話さないで、話せないで、生きていたから、きっと分かんなくなっていたんだろうね。
 ありがとう、コノハちゃん。
 ちょっとね、分かってきた」
 すごくゆっくりで小さい声だけど、あたしには、ココロに伝わるような、ミコトちゃんの正直なコトバだった。
「うんっ」
 あたし、コトバが見つからなかったから、ただ、うなずいた。
 それで、
「そうだ! ミコトちゃん!
 あたしの、おとうさんとおかあさんに会って欲しいの!」
「? コノハちゃん……?」
 急な事にびっくりして、きょとんとしているミコトちゃんに、あたし、言った。
「うん、そうだヨ!
 おとうさんとおかあさん。あたしのネ。
 すごく優しいんだヨ。だから、きっとミコトちゃんにだって、優しくしてくれるヨ!」
 あたし、笑顔で言った。
 きっと、おとうさんも、おかあさんも分かってくれる。
 あたしのお友達のミコトちゃんなんだから、きっとあたしと同じくらい、ミコトちゃんに優しくしてくれる。
 愛してくれる!
 だから、本当のおとうさんとおかあさんじゃないけれど、ミコトちゃんにも、あとうさんやおかあさんになってくれる。
 きっときっと、大丈夫だよ、ネ?
 だからあたしは、ミコトちゃんに、あたしのお家の場所を教えてあげた。今日の昼過ぎには、きっと来て欲しいって。
 だって、ミコトちゃんとは、トモダチだから!
 あたしのコト、何でも知っていて欲しいの!
 ミコトちゃんも、少し考えていたケド、「行く」って言ってくれた。
 あたし、すごく嬉しかった。
 お日様が顔を出してしまうまでに、あたしは急いで走って走って、お家に帰った。
 こんなに、うきうきしたのっていったら! ない!
 だってだって、

 お友達が、自分の家に遊びに来てくれるんだヨ!


 こっそり気づかれないように、あたしはお父さんとお母さんの間に入って、瞳を閉じた。
 でも、わくわくして、ちっとも眠れなかった。
 お友達が、家に来るのって、とってもどきどきするのネ!
 そうだ! どうせだったら、おとうさんとおかあさんを驚かせちゃおう! ミコトちゃんが来るってコトを黙っておくんだ。そしたら、ニンゲンのお友達が出来た、っておとうさんとおかあさんが知ったら、とってもびっくりするだろうな。
 あたし、ふかふかの葉っぱのお布団に入って、でも笑うのを必死で我慢して、ずっと待ってたの。



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