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脇目も振らず通りを歩いた。
それがいけなかった。女はまた別の男に脇道に引きずり込まれたのである。またも仰向けに倒され口をふさがれてしまった。
今度の男も二十代中頃、同じくナイフを持っている。
「騒ぐと殺す、おとなしく言うことを聞くんだ。分かったな」
首を縦に振る女。
「ほう、なかなかいい体をしているじゃねぇか」
男の手(口をふさいでいた方の手)が女の胸のあたりに狙いをつけはじめた。
女は覚悟した。今度こそ駄目だ、もうおしまいだ、殺されるかも、無残な姿をさらされてしまうかも、さよなら私の人生よ・・・・
男の手によって衣服をむりやり脱がされ始めた時、背後から奇妙な声が飛んできた。
振り返る男、そこには・・・・複数の人影が。
「ちょいとそこいくお兄さん」
「それはちょっと見逃せない」
「女の敵は殺しましょう」
「殺しちゃだめよ、虫の息」
「法に代わって悪を討つ」
何かポーズをとっているようだ。
「五人揃って!」
「殺人戦隊、マーダラー!推参!」
なんじゃこの展開は!
「おうおうおうおう、せっかくの楽しみを邪魔するのは何処のどいつだ」
男が立ち上がりナイフを構える。結構体格はあるようだ。
「フッ、たった独りで立ち向かうとはいい度胸だ。しかしな、こちらは五人で戦わせてもらう」
赤いのが答えた。
「正々堂々戦っても負けては話しにならん」
黒いのが答えた。
「我々はいつも勝つことが使命の戦隊」
黄色いのが答えた。
「勝てばいいのよ、どんな手を使ってもね」
白いのが答えた。
「貴様らのような虫けらは片っ端から、消す!」
青いのが締めくくった。
男は少しひるんだのか、逃げ腰になっていた。
「逃がすか!みんな行くぞ!」
「レッツ!マーダラス・アクション!」
赤の掛け声に残りが不気味に答える。5対1で勝てるはずもなく男はすぐ捕まった。
そうして気付けば、白いのが女の方へやってきた。
「あなた大丈夫?何もされてない?」
女ははだけた胸を上着で隠しながらうなずき、白いのに抱きついて号泣した。
白いのはやさしく抱き締め、髪を撫でていると、
「おらぁ、この恥じ知らずがぁ!」
「可愛い女性になんて汚い事を!七代たたるぞ!」
「死んで償えぇ!散れぇ!輪廻転生するなボケェ!」
「写真に撮って家族、会社にばらまくぞコラァ!」
男は動かなくなった後にも蹴り転がされていた。
「もういいです、もう止めて」
女はそういって止めさせた。男が余りにもかわいそうになってしまったのである。
それを聞いた戦隊が女の元へ駆け寄ってきた。
「あんな男を許すとは、なんと心の広い御方だ」
「こんなひどい目にあっているというのに」
「このような女性がこの国を変えるのでしょう」
「このような人たちを守るためにも、もっと強い力を身につけねば平和は守れない」
「よし、みんな引き上げるぞ。男はこちらで処分しますから気を付けてお帰り下さい。何かあったら我々を呼んでください。では!」
戦隊は、男を担がずに引きずって去っていった。
「処分って一体・・・・」
ハッと我に返り、急いで家にむかって走った。
ようやく家についてほっとした。鍵を開けて中に入り椅子に座る。独り暮らし(家と言ってもアパートだな)なのでこんなとき慰めてくれる家族がいなければ、恋人もいない。そして恐怖から逃れたことでまたも涙がこぼれる。
「今日は変なことばかり起きたわ。もう真夜中も過ぎたし眠ってしまいたい」
女は椅子から立ち上がると寝室のほうへ向かった。扉を開けてベットに倒れ込む。そのまま眠りに落ちるはずだった。
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