わけのわからんホワイトホールもどきがたくさんあると言うへんてこりんな森の入り口に住んでいる年齢不詳のお姉ちゃん・・・こと『死の右腕』は、一人暮らしなのもあってか料理の腕は確からしい。
 出されたもの、特に女性の手料理は残さず食えと言う、俺の俺による俺のための教訓の元に食べた料理は、『美春の子』と『氷雪の牙』の二人が保証したのもあって、物凄く美味しかった。見た目は見たこと無いし、材料も見たこと無い変な物ばっかりだったけど。
 で、食後のお茶(バター茶もどき?ものすっげえ色してる)を飲んでいるときに、俺は夕食前に聞きそびれていた事を、改めて三人に尋ねてみた。
「聞き忘れてたんだけど、『羽毛の蛇』っていう女の子、あれって一体何者?」  もしかしたらまずい質問かもしれないと思っていた俺の目の前で、三人は顔を見合わせると、まず最初に誰が話し始めるかを相談し始める。
 表情からして、まずい質問をしちまったわけじゃ無さそうだけど、そう簡単に口に出せるような話題でも無いらしい。
 結局、最初に口を開いたのは、今までの会話の中から何と無く最年少なんじゃないかな、と目星をつけていた『氷雪の牙』だった。
「あれは、森の賢者だ」
 えらく簡単な答えに、俺はなんとなく納得しかけたが、『死の右腕』が派手にその後頭部をはたく。
「こら!この坊やは何にも知らないんだから、もっとちゃんと説明してやりな!全く、ガキの頃からちっとも変わりゃしないんだから」
 ごつくて目つきの悪い大男をど突き倒す貴女も大概なもんだと思います。と、俺が心の叫びを胸の奥に押しとどめていると、彼女は年齢不詳なのに小皺の一つも見えてこない笑顔で説明をはじめる。
「あのお嬢ちゃんはね、ちょいと事情持ちなのさ。私が知ってる子の中でも、飛び切り可愛くて、そんでもって気立ても良い、森の賢者なんてさせるのがもったいないくらいの娘さんでねぇ。でも、あの子は生まれつき呪いをかけられた身なんだよ」
 話す内にほんの少し憂いを含んだ『死の右腕』の表情に、俺は何事かと首を傾げた。
「呪い?」
 聞き返した俺に、今度は『氷雪の牙』が頷く。
「美しく、慈悲深いが、生まれる前に森が彼女を欲したため、口より漏れる言葉に、全てを醜い灰汁へと変えてしまう呪いをかけられた。俺もそうだが、『美春の子』や、『死の右腕』ですら、あれが言葉を話している所だけは見たことが無い」
「でも、笑うととても可愛いんだよ。最も、最近は麓に降りてくる事もなくなって、僕達もたまに森の中で見かけるくらいなんだけどね」
 重苦しい『氷雪の牙』の言葉を、最後に『美春の子』が締めくくった。
 話自体、俺の世界じゃ信じられない話だったけど、それはこの際無視しておこう。今重要なのは、あの白い髪の『羽毛の蛇』が、一生誰とも口をきけないように、変な呪いをかけられてるってことで、それさえなければ、顔良し性格良しの超完璧美少女ということ。 ・・・いや、暫定美少女、かな。こいつらを見る限り、人の年齢を見た目で見ちゃいけない場所みたいだし。 気になるのは、あんまり麓に下りてこないってこと。ということは、明日麓に降りる俺は、もうあの子にはあえないってことなんだろう。
 可愛かったな。
 もう一度会いたいなって思ったけど、それはそれでしかたない。文字通り、住んでる世界が違うってやつだろうし。
 考え事をしている俺の前で、三人はまた何事かを話し始める。
 でも、『羽毛の蛇』のことばかりを考えている俺の耳には、聞こえる位置にあるはずの言葉も、何一つ耳に入ってこなかった。


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