朝日が昇る前。
 俺は一人で、家の外にいた。
 朝ご飯はまだ食べてない。けど、起きてからすぐの所為か、腹は全然空いてない。むしろ、ちょっと胸のあたりがへこむような感覚が、少し気持ちいいくらい。
 三人が起きているのかどうか、それはまだ確認していないけど、確認せずに、敢えてこっそり外に出てきた。
 実は昨夜、借りたベッドに寝転びながら、考えた事がある。
 俺って、実際のところどうなんだろう
 いっつも何かに依存して、中途半端に生きてるような俺が、この世界に来て、どう言う風に本質をさらけ出しているのか、俺から見ただけじゃ良くわからない。結局人間ってのは、客観的に見てるようで、本当は主観でしか世界を見られない生き物なんだろうな。
 難しい事は良くわからない。けど、とにかく、今この世界で振舞ってる俺ってのは、多分、俺の中で普段は出てこようとしない、俺の本質なんだと思う。
 これからの事なんて良くわからないけど、元の世界に帰る前に、まず一つだけやってみたいことがあった。
 まだ、何ができるのか、何が起こるのか、難しい事はわからない。でも、目的だけがはっきりと頭の中にある。
 家の裏側に広がっているように見える、森に目を向けた。
 この時間、彼女は起きているだろうか。
 はっきりいって俺は生き物の気配とかそういうものがわかる人間じゃないから、鬱蒼とした森は何処にどんな生き物がいるのかすらわからない。バードウォッチングは小学生の時一度体験した事があるけど、鳥を発見できなくて、苦手だった。
「・・・・・・よし」
 見た目だけでひるんでみても意味は無い。
 とりあえず、やるだけやってみっか!
「――――――――――――――っ」
 胸一杯膨らませるくらいに思い切りやった深呼吸の後、俺は体育会系で鍛えた自慢の大声を張り上げた。
「お――――――――――――――――――――――い!」
 森の中からも、家の周囲からも、一斉に小鳥が飛び出てくる。
「起きてるか『羽毛の蛇』ちゃ――――ん!もし起きてたら、聞いて欲しい事があるんだ―――――――!」
 絶対家の中の連中、起きてくるな。
「俺さあ!昨日!君と会った男なんだけど―――!もう二度と会えないからさ――――!今の内にサヨナラ言っときま―――っす!」
 何か俺、馬っ鹿みてえ。
「君さ、結構、いや、マジで可愛いよ―――――――!森の中に篭ってるのなんか勿体無いくらいに―――――――!」
 全部、言いたい事言い終わった後、家の周りの原っぱには、少しの間、俺の声が反響してた。
 大絶叫のおかげで、喉はカラカラ通り越してガラガラ。お腹も、大合唱をはじめる一歩手前。でも、明け方の空に、赤みがさしていくのを見て、こんなに気持ち良い朝は、多分生まれて初めてだって、思った。
 やっぱさ、一目出会っただけでも、可愛い女の子には、ちゃんと「可愛いね」って言っとくのが、俺のポリシーですから。
 たとえ、答えが返ってこないって、はっきりわかってる相手でも、その言葉自体に、意味なんてこれっぽっちも無くても、俺は、それを言葉にする。言いたい相手に、投げかける。いわゆる、それが私の生きる道ってやつ?
 馬鹿でしょ、俺って。
 笑っても良いよ。自分で言ってて、結構笑えるから。


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